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ダブルマテリアリティアセスメントに備える:CSRDにおいて企業に求められるさらなるステップ
06 11月 2023

ダブルマテリアリティアセスメントに備える:CSRDにおいて企業に求められるさらなるステップ

3.8分読了
企業の気候変動対策 気候リスクと機会 持続可能な金融
Magnus Kagg Senior Managing Consultant, Environmental Impact Assessment

CSRD:企業のサステナビリティ報告における大きな前進

当社の過去のウェビナーに参加された方や、欧州連合(EU)のサステナビリティ規制の最新動向について以前当社が公開したブログを確認された方は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の内容について既にお分かりでしょう。CSRDは、企業によるサステナビリティ報告において大きな前進を表し、EUに位置する企業に対し、環境や人権への影響を透明かつ一貫性をもって開示することを法的に拘束する、低炭素な世界へのより公正な移行を目指して生まれたフレームワークである。

前回のブログは、CSRDの概要と対象について紹介したが、今回は、新規制の重要な要素である「ダブルマテリアリティ」の概念に焦点を当て、その意味、重要性、及び企業が今から準備できることについて掘り下げる。

CSRDの背景

パリ協定の1.5℃目標の達成に向けて成果を届けるという使命で、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は欧州委員会の支援の元、2001年に設立された。

2022年に、CSRDの発行に伴い、EFRAGがEU域内に活動する企業に調和されたサステナビリティ報告基準について技術的助言を提供するようになり、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を草案した。ESRSは現在、EU域内の5万社以上の企業と特定の組織を対象とする、環境・社会・ガバナンス(ESG)の影響及び気候関連リスクと機会の開示を義務付ける基準である。

CSRDの概要について、過去のブログを確認。

ダブルマテリアリティは気候変動の影響をより深く分析

新しいCSRDのフレームワークでは、ESG評価に「ダブルマテリアリティ」の原則が適用され、以下2点ついて報告が義務付けられている:

  1. 企業が気候変動によって被る財務的影響(財務的マテリアリティ)、および
  2. 企業が人や環境に与える影響(インパクト・マテリアリティ)

CSRDは企業が自ら環境に与える影響について理解を深める上に、説明責任を求める。よって、ダブルマテリアリティアセスメントは、戦略的ESG計画、 予算配分、リスク管理、レポーティングにとって極めて重要な基盤となる。これは、企業の業績、価値創造、レピュテーション、法的立場に影響を与える可能性のある気候関連の影響を特定し、優先順位をつけるとともに、企業のESGインパクトを明確にする。

詳細を理解することがCSRDの報告要件を満たすカギとなる

CSRDの導入により多く企業にダブルマテリアリティアセスメントが義務付けられたが、どこから始めればよいのか迷う企業も少なくない。

適切な仕組みとプロセスを確立することから始める:ダブルマテリアリティアセスメントを実施するには、組織全体のより広範な関与と、ガバナンス構造とプロセスを確立するための社内協力が必要である。South Poleは企業に対し、マテリアリティアセスメントの調整と実施にプロジェクトマネージャーを指名することを推奨する。また、包括的な企業監督体制の構築とその主要な関係者の関与は、社内リソースの適切な配分、そして検証結果の効果的な企業戦略への統合に不可欠である。

また、この取り組みの一環として正確なデータを収集することが重要な上、企業が特定したトピック(=課題)の財務的マテリアリティとインパクト・マテリアリティを評価するための強固なプロセスの設置も必要である。課題については、当該企業に最も該当するESGの議題を網羅する、マルチソースアプローチの採用を推奨する。情報開示には、マテリアル(重要)な課題を特定するためのプロセス、課題のリストアップ、そして課題の管理・モニタリングについての記述も必要となる。

ステークホルダー(=主要関係者)と第三者検証の重視

企業が特定した重要課題を検証するためには、主要関係者との調整も重要となる。情報は調査、インタビュー、会議、ワークショップなど、あらゆるコミュニケーション・チャネルを通じて集めることができる。これが行われ、課題が検証・理解・評価されたら、そこでやっと行動に移すことが可能になる。

最後に、報告書の透明性と有効性を確保するために、マテリアリティアセスメントのために実施されたすべての分析を文書化し、開示すべきである。CSRDの対象となるEU企業には、さらに第三者による追加的な検証が推奨される。

早めの対応は、結果として時間の節約となる

ESRSは持続可能な未来に向けた重要な一歩であり、企業は長期的な存続を確保するために新基準に適応しなければならない。ダブル・マテリアリティ・アプローチは、ESGの影響、リスク、機会を包括的に評価し、企業が環境や社会への影響に対して説明責任を果たすことを促すものである。

ESRSを遵守するためには、企業は適切な体制とプロセスの確立、重要な課題の特定、エビデンスの収集、主要関係者との結果検証、そしてその結果に基づいて行動に移す必要がある。ESGの優先事項との整合性の確保、効果的な報告を行うためには、定期的にアセスメントを行うことが大事である。

追加的な報告は負担に思えるかもしれないが、CSRDへの早期対応は、要件による長期的なメリットやコスト削減について気付きを与え、イノベーションのきっかけにもなる。また、レジリエンス強化にも役立つサプライチェーン内での協力・連携に機会を開くこともできる。

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また、さらなる支援をお求めの方に、South Poleはダブルマテリアリティアセスメントのまとめ方やデータ収集・分析の合理化について実績に基づいたご案内ができます。

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