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日本企業の5分の1が科学的根拠に基づく目標について社外に発信していない
18 10月 2022

日本企業の5分の1が科学的根拠に基づく目標について社外に発信していない

プレスリリース
South Pole Team

サウスポールの2022年ネットゼロ報告書によると、より多くの日本企業が科学的根拠に基づく目標を掲げネットゼロへのコミットメントを支持しているものの、5分の1の企業はそれについて社外に発信する予定がないことがわかりました。

つまり、確固たる目標を掲げている企業の多くが、環境に配慮した行動を取っているにも関わらず、それについて沈黙を保っているのです。

これは、企業が掲げている気候変動目標を精査しにくくするとともに、脱炭素化に関する知識の共有を制限し、野心的な目標の設定を妨げ、業界が協力する機会を逃すことにつながります。

サウスポールの2022年ネットゼロ報告書の調査結果

  • 調査対象となった日本企業の5分の1は、科学的根拠に基づく排出削減目標を設定しているにもかかわらず、それを社外に発信する予定はない。
  • 企業のグリーンウォッシュは広く報道されているが、今回の調査では、企業の間で「グリーン・ハッシング」つまり高い環境問題意識を持ち行動しているのにそれについて沈黙するという新たな慣行が起きていることが明らかになった。
  • 顧客からの圧力とブランド戦略はネットゼロ目標を設定する要因として上位に位置しているが、調査結果によると、目標を設定することは今後各企業にとって特別なことではなく、むしろ企業イメージを保つために不可欠な戦略になる可能性があることを示唆している。
  • 調査対象企業の4分の3が過去一年間にネットゼロに関する予算を増やし、ネットゼロ目標の達成に至っていない大多数の企業でさえもサステナビリティ担当チームを拡充している。

2022年10月18日(東京)ー 世界有数の気候変動プロジェクト開発およびソリューションプロバイダーであるサウスポールが世界各地で行なった調査により、科学的根拠に基づく目標を持つ日本企業の5社に1社が、その目標を社外に発信する予定がないことが明らかになりました。

サウスポールが本日発表した「ネットゼロおよびその先を目指して:気候分野の先駆者を突き動かしているものは何か、深く掘り下げる」と題する年次報告書は、12カ国および複数セクターにおいてネットゼロ目標を持つ1,200社以上の大企業を対象に実施した調査に基づいております。調査の結果、ほぼすべての企業が、ネットゼロ目標と並行して科学的根拠に基づく排出削減目標を設定しているか来年中に設定する予定であることがわかりました。調査対象の企業の動向は、より気候変動に敏感な企業が現在ネットゼロへの取り組みをどのように進めているか (または進めていないか) を示す指標となります。

サウスポールはこれまで、企業がネットゼロ目標を設定する主な理由は、低炭素製品やサービスに対する消費者の需要や長期的なブランド戦略であることを示してきましたが、本年の報告書によると、このような理由から科学的根拠に基づくネットゼロ目標を設定している企業の大部分は目標を社外に発信する予定がないことが明らかになりました。

昨年のCOP26を前に、世界中の何百もの企業がネットゼロ目標を設定し、人目を引くような形で社外に目標を発信しました。その後も企業の意欲は衰えず、サウスポールの調査でも、企業がネットゼロ目標を設定し続け、それを支える予算も増えていることが確認されています。しかし、ちょうど一年後のCOP27を前に明らかになった、科学的根拠に基づく目標を公表することへの消極的な姿勢は、一部の企業が目標を広く知らしめたくない理由について疑問を投げかけています。

サウスポールのCEO、レナット・ホイベルガーは次のように述べております。「私たちは、企業が排出量削減に関するマイルストーンを設定し科学的根拠に基づく目標を支持するようになっていることを認識しており、これは絶対に正しいアプローチだと考えています。しかし、もし5分の1の企業が、自分たちの目標が信頼に足るものであることを示す詳細を明らかにしないのであれば、企業のグリーン・ハッシングが広がっている可能性があるのではないでしょうか。私たちが地球に与えている影響を考えるとこれまで以上に、サステナビリティを推進している企業が同業他社に刺激を与え行動を開始するように触発する必要があります。ただこれは自社の取り組みを外部に発信してこそ可能です。」

グリーンウォッシュが蔓延し訴訟が増加する中、ネットゼロに到達するための課題について正直に話すことは不可欠です。調査報道が虚偽の主張を指摘することは、各企業が気候変動に対する目標を野心的にそして誠実なものに保つことを促進します。同時に、サウスポールの2022年ネットゼロ報告書が明らかにしたように、メディアの詮索は自主的に目標を設定している企業がよりオープンになることを妨げている可能性があります。

サウスポールの共同創業者およびサウスポール日本オフィスのマネージング・ディレクターであるパトリック・ブルギは次のように述べております。「2022年ネットゼロ報告書において、サステナビリティに関する企業の意欲が高いままであるにもかかわらず、その声が小さくなっているという矛盾が生じつつあることが明らかになり、懸念しております。というのも日本企業には、ネットゼロ目標の背景にあるものをオープンに語ってもらう必要があるからです。科学的根拠に基づく目標のみならず企業目標自体を設定していない企業が多い中、目標を設定するだけではなく社外に発信することが重要であるといえます。」

サウスポールの報告書では、企業は目標の公表を見送る可能性があるものの、目標の実現には邁進していることが明らかにされています。世界各地で調査した企業の4分の3が、ネットゼロに関する予算を2021年12月以降増やしており、これは日本からの調査対象となった企業と同じ割合です。また、多くの企業が外部のコンサルタントを利用するのではなく、新しいスタッフを雇用しサステナビリティチームを強化することで社内の能力を高めています。

特筆すべきこととして、調査対象となった日本企業の3分の1が、目標達成は予想以上に「困難」であると回答しています。日本企業の3分の1以上(38%)は目標達成が「順調でない」ことを認めていますが、今年度は「大幅に」取り組みを拡大する予定でいます。

排出量が多いことを認識している企業(このうち76%が科学的根拠に基づくネットゼロ目標を掲げている)の4分の1近くでさえ、義務付けられた以上のマイルストーンを社外に発信しないと決定しています。 メディアや規制当局が注視しているような多排出企業でさえ気候変動実績の報告を社外に発信していないとしたら、未上場の多排出企業に目標の公表を奨励することは大変困難であるといえます。

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編集者への注意事項

SBTiの公表する科学的根拠に基づく目標設定の必要条件は、年ごとの排出量および進捗状況の開示とともにsciencebasedtargets.orgに公開されています。これは、目標を広く社外に発信することとは異なります。つまり、調査対象となった企業の4分の1は、ステークホルダーに対して目標や進捗状況を積極的に伝えていないことになります。

サウスポール社について

サウスポールは、世界経済フォーラムのシュワブ財団によって認められた社会的企業であり、今日では世界有数の気候ソリューションプロバイダーおよび炭素プロジェクト開発企業です。 2006年の設立以来、50カ国以上で約1,000のプロジェクトを開発し、1ギガトン以上のCO2排出量を削減するとともに、気候変動に対して特に脆弱な地域社会に社会的利益を提供しています。サウスポールが開発するプロジェクトは、持続可能な農業、森林保全、廃棄物管理、エネルギー効率化、分散型再生可能エネルギーなど多岐にわたります。またサウスポールは、ネットゼロを達成するために、何千もの大手企業にサステナビリティに関するコンサルティングを提供しており、世界中の企業、政府、組織が気候変動対策を長期的なビジネスチャンスに変える包括的な戦略を開発および実施しています。 お客様により良いサービスを提供するため、東京の専門家チームが日本のお客様をサポートいたします。詳細は、日本語のホームページ(https://www.southpole.com/ja)をご覧ください。また、 www.southpole.com/ja をご覧ください。また、LinkedInTwitterFacebookInstagram.でフォローいただきますと、気候変動に関する最新のアップデートを得ることができます。

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